「会いたいです!」とメールしてきたヤバい女と会ってきた日の話
ライターを始めてもう5年くらいになるが、知らない人から「会いたいです!」といった旨のメッセージを頂くことがたまにある。いつ見ても意味がわからないなと思う。
仕事のご連絡とか、お互いにフォローしているとか、そういうのならもちろんわかるし大歓迎だ。メリットも理由も双方にある。
「お会いして僕の記事を添削してくれませんか?マキヤさんがお休みの日で結構です!場所は五反田などでいかがでしょう?」
俺に、なんの、メリットが、あるんだ。
人の時間を何だと思っているのか。どうして五反田行かなきゃいけないんだ千葉にいるんだぞ。お前の家の近くから選んだのか?普段毎日仕事でやってる添削や記事編集を、どうして無償でお休みの日にやらされなきゃいけないんだ。休むよ普通に。
とはいえ好奇心から会ったこともあり、メールしてきたおじさんとルノアールに行った日記を書いたこともある。たまにゲームの相手をTwitterで募集したりしてるし、俺のそういった隙がこういうメールを生み出してしまっているのだと思う。
そう頻繁にくるわけではないけれど、たまにそういうメールを受け取ることはある。そして1つだけ、強く印象に残っているものがある。
ちょうど2年前、そのメールは突然にやってきた。
潔さすら感じる、俺に一切のメリットがない提案。捨てアドみたいなヤフーメールで送られてきた。
最初は、学生かな?と思った。
勉強中とのことだし、相手の時間を奪うことに考えが及ばないのは、学生なら仕方ない部分なのかとも考える。
ただそうは思っても俺は別に全然話してみたくないので、一ヶ月も放置したが丁重にお断りを入れた。今見返してもすごく丁重だ。返信すら来なかった。
まあこういう人なんだろう。これでおしまい、そう思っていた。
返事はそれから2ヶ月半後、完全に忘れた頃にやってきた。
ちゃんと謝られると心が痛む。文面が少し冷たかっただろうかと気にしてしまう……ん?
すごい、何が何でも俺の時間を奪おうとしてくる。わずかでも俺の時間を奪って自分のエネルギーにしてやろうとする気概。どうして見ず知らずの人にそんなことしなきゃいけないんだ。
ここまで相手のこと思いやれない人も珍しい。少し返信を考えるが、こいつの為にメリットを羅列するのも面倒だ。
雑に、やりとりを終わらせるように返信をした。
こういう人は対応を間違えると発狂したりする可能性があるので、なるべく刺激しないように丁寧に、でも拒絶の意思はハッキリと伝えるように返信した。
まあこれでひと段落のはずだ。勝手に解決したと判断し、カルディでマシュマロを浮かべるタイプのココアとかを買ったりしていた。
またひと月後、事態は急展開を迎える。
なに???なんだ???ライフワークは美?????なに???
素性の意味わかってんのか。「社交的なタイプです」で終わる素性があってたまるか。
ななななんでそうなんの!?まさかあのメールをイエスと捉えているの?
うおおおなんかすごい話進めようとしてくる!!なんで!断ってるのに!行かねえよモツ鍋!
僕はメールを無視することにした。きっと何を送ろうがずっと返信されるから。
地中に埋まってないタイプの地雷を見つけた恐怖から、そっと目を逸らし、無視という形で終わらせた。
全然終わらなかった。
なんか来てる!!!強い文章が来てる!!返信してないのに!
なんなんだ一体、すごい自分に自信がある人なんだろうか。
あやしくもキモくもない人は再度メールしてまでこんなこと言わないんだよ。
またこちらの手間を促してくる……無視したのがよほどよくなかったんだな……
興味を持ってもらえたらって……会うわけないだろこんなのと……
……
……
いや。
ここまでのやりとりで、興味を持っていないといえば嘘になる。
俺は昔から見つけた地雷を、絶対に自分で踏み抜きたいと思ってしまうから。
少しだけ昔話をさせてください。
中学生の時、テキストサイトに夢中だった。テキストサイトとは、まだブログとかもほぼ普及してない時代にホームページを作って、日記や企画記事のようなものを公開していたすごいサイトたちだ。
部活帰り、毎日のようにパソコンを持ってる友人の家に集まって皆で画面の周りに集まり、更新されているテキストたちを読んだ。
笑ったり、考えさせられたり、自分でもやってみようとブログを作ってみたり。地味なことではあるが、自分にとって間違いなく「青春」の1つだったと思っているし、後に文章について学べる大学に進むなど人生設計にも大きな影響を与えている。
テキストサイトにおいて、「ヤバい人に会った話」みたいな記事は多かった。当時はそんなにネットも普及していないから、インターネットにいる人間の濃度が高かったことも要因だと思うが、1つのジャンルと言ってもいいくらいに存在していた。
今、そのジャンルはかなり時代にそぐわなくなっている。コンプライアンス的にもリスクがあるし、そもそも動画のが全然わかりやすい。
でも一番好きだったのはそういうテキストだ。テキストでしか伝えられない部分もあると思ってるし、当時の俺は本当に読んでて1番楽しかった、たくさん笑わせてもらった。しかし今はそういう記事を読むことがほとんどない。
だからもう、俺が会ってきたよ。
時代に合わせて不要なリスクを避けるために、登録制のサイトに書いたけど許してくださいね。
読みたい人だけ読んでくれたらうれしい。