【書きかけだった日記】コーヒーの日
僕がコーヒーハラスメントと呼んでいる、手塚という友人がいる
小学校のときからの幼馴染で、大学生の時も3年間くらい一緒にバイトをしており、男2人で年1で旅行にいくくらいに仲がいい。
「コーヒーと踏切が大好き」というあり得ない嗜好の組み合わせをしており、旅行にいくとコーヒーを淹れる器具を持ってくるし、踏切の向こうに海が見える素晴らしい景色を見れば「すごい!C型踏切だ!こんなに見通しがいいところで!?」とか言って旅情をかき消してくれる。
彼は趣味でひたすらコーヒー豆を煎っており、彼の家に行くと「ザクロのようなアロマを感じる」「ダークチョコレートのような深いボディ」などと意味不明の供述をしつつ、致死量のコーヒーを提供してくれる。俺はこの一連の行為をコーヒーハラスメントと呼んでいる。
余談だが俺のラーメンの記事がバズった時も彼との旅行中だった。その直前のツイートがこれだったのでついでに読まれ、twitterに「コーヒーハラスメントとか最悪だな」みたいな呟きが発生し、それを読んですんごい切ない顔をしていた。
そして趣味が高じて、彼は1年ほど前からネットショップで豆を販売をしている。
「俺がTwitterで告知して、そこ経由で買ってくれた人にハラスメントカードをつけるというのはどうだ」というコンサルをしたところ大却下された。
「売るものだからもっと極めないと」との思いからか、彼は焙煎の環境をよりリッチに整え、テストで煎った豆をついに無断で俺に送りつけてくるようになった。遠隔コヒハラ。送料も彼の負担だ。「酸っぱかった」「苦かった」しか言わない俺にどういうモチベーションで発送してくれてるのかは一切の謎だ。
俺は俺で豆を持て余したくなくて、勧められるがままにデロンギのエスプレッソマシンを買い、すっかりコーヒー生活になってしまった。
今年から、彼は保健所の許可などをしっかりとり、屋外のリアルイベントで淹れたてコーヒーの販売もするようになった。
初回、田舎の公園での農協みたいなイベントで1杯600円で売っていて、見に行ったらお客さんすごい少ないのに1杯に10分くらいかけてたからすごい渋滞してた。
ほぼ毎週、様々なイベントにコーヒーの屋台的な感じで出店している。田舎の公園から始まった出店も、今は繁華街の駅前ロータリーなどグレードアップしていっていた。
今は魔法瓶にいれたすぐに出せるコーヒーや、カフェオレ用のエスプレッソ、水出ししたコーヒーなどを仕込んでおり、すぐに提供することも出来るようになっていた。もちろん600円払えば10分かけて淹れ始める。
同じコーヒー豆なのにポットのは400円、淹れたては600円としっかりこだわりも見せていた。「淹れたては全然違うからね」と言われて飲んだけど同じだった。
俺はずっとバカにしつつもこっそり尊敬もしていて、「コーヒーの屋台」ってわりと珍しく、しかもすごいこだわって淹れてくれるから評判もいいらしい。なぜかpaypayどころかクレカ払いにも対応していた。
全力で趣味をやって、それが人気になりお金になっているのは素晴らしいことだと思う。
「明日アリーナで出店なんだけど、一緒に共同出店する予定の人がコロナになったから2つ分やらなきゃいけなくて、コーヒーの接客と会計を手伝ってくれないかな」
そんな連絡が前日に来た。予定もなかったので別にいいよと連絡する。それにしてもアリーナで出店なんてすごいじゃないか。
「ありがとう!!助かる!!そしたら明日の8時、会場のキッコーマンアリーナで!」
キッコーマンアリーナ??????????
ちょっと一切聞いたことなかったので困惑した。